ラボを捨て、ビーチに出よう

Love-tuneから7ORDERへ:どこにいたって君がアイドルだ

キルミーアゲイン'21、2回目。やっぱりまとまらない感想(笑

 10月8日の夜、劇団鹿殺し20周年記念・舞台「キルミーアゲイン'21」を見てきました。今回は、前回の初日が素晴らしくって、そっから取ったチケットだったので後方のお席でした。でも、舞台全体が見える良さが本当にあって、それはセットのことであったり(たにし座に染みついた鉄砲水の後であったり)、舞台上のそこここに立つ役者さん同士の無言の表情やそのやりとりであったり、過去と現在、その狭間での照明の色合いで会ったり、四方八方に広がるハラワタの可笑しさであったりとか、そして何より村へ帰ってきて、村から再び去っていくさなぴー演じる藪中の表情を見ることができたのはとてもよかったなあと。

 2回目の観劇は、そんな風にして物語のあらすじも一通り理解できていて、そこここにちりばめられてある登場人物たちのその時点では明示されていない思いも思ったよりもくっきりとちりばめられていて、そして何より吹奏楽部のメンバーの演奏が更にエッジが効いて素晴らしくなり、そんなかんなもあって、哀しい想いが胸いっぱいに広がって、涙がじわじわと溢れてくる・・そんな観劇になりましたね。そして、自分の経験から、この物語の原点のように見えてしまう、1995年の阪神・淡路大震災のことを、その時の仲間たちのことをふとした弾みに思い出し、そしてそこから過ごした26年の月日を振り返る・・という甚だパーソナルな空間に陥ることになったのでした。お芝居の世界に自分が飛び込むのではなく、お芝居の世界が自分の胸の中に飛び込んできてその中を変えていく。そんな観劇体験になった気がします。
 その一つの要因が、楽しくも素晴らしい音楽たち。中でも一番のクライマックスで、一番の哀しい場面でチョビさん演じるやまめちゃんと吹奏楽部が高らかに唄い鳴らす「たましいのあし」。哀しいけれど、力強くて、生と死が、過去と現在が一体であることを高らかに演奏してくれる1曲。その少し懐かしくなるような、賛美歌や頌栄の一曲にもあるようなメロディを聞いてると、やはり1995年当時にいた自分の環境のことを思い出さざるを得なくなる。やまめちゃんが鳴らせなかったトランペットは最後に一度だけ、過去の人々をよみがえらせ、現在との和解を取りなす合図としての、その1回だけ吹き鳴らされると・・。あの甦がえりのラッパだったのかなあと思ったりするなど、やっぱり1995年当時いた自分の環境との繋がりがどうしても出てきてしまうのですよね・・。だから、きっと私にとっては、このお芝居というのは、自分にとっても自分の原点であり、そこから歩んできた道、そしてもう一度、いや何度でも歩み直す道をくっきりと見せてくれる、そういうものであったと思います。丸尾さんが私小説的な戯曲を書いてるというのを色々とご本人も言ってるし、お見掛けもしますが、そういう私小説は誰かの「私小説」にもエネルギーをくれるものなんでしょうね。。
 そんな、とてもお芝居の感想とは言えない感想(いや、今回、きちんと全体を網羅するような見事なレビューをいくつか見せてもらえて、プロの観劇者って凄いなあって思ったんですよ!)をまとめて、後は素晴らしい俳優さんたち(いや、ほぼほぼ全員好きになっちゃいましたよ)のことをメモ程度ですが残しておこうと思います。

  • 谷山知宏さん:ひとつひとつの動きとセリフがキレまくり、存在感バチバチで凄かった~。色んな人から色んな経路で花組芝居を勧められるのですが、今回の谷山さんを見て、ぜひ行かねば!と思ってる次第です。
  • 小林けんいちさん:好き、めちゃ好き。自分にとってとても懐かしい感じのするお芝居をされる方でした。軽さと存在感。間合いのタイミングの良さ。声が素晴らしく通って好き。7ORDERのみんなともぜひお芝居をしていただきたいと。
  • 菜月チョビさん:歌って、歌の力ってこういうことなんだと改めてわからせてくれたチョビさんの歌。なぜあんなに懐かしくてなぜあんなに哀しいのか。やまめちゃんが出てくるだけで、唐さんやつげ義春の世界に染まる、それもカジュアルに・・。日本にとっても大事な大事な女優さん(あえて言いますが)だと感じました。
  • 丸尾丸一郎さん:不思議。軽くて、強いようで弱くて、でも強い。丸尾さんの私小説的な世界観がカジュアルに躍動的に展開されるのは、きっと丸尾さんの柔らかでしなやかな(あー、なんて陳腐な表現)が役者としての存在感があるからなんだろうなあと思うし、外の役者さんがやるとまた違った様相が表れるのがなんだか凄い(それがストレートなんだろうけれど)と思うのでした。そして、丸尾さんが7ORDERのことをよくよく見てくださってるのをめちゃビシビシと受信しましたよ。ぜひ、また我が軍にオリジナルの戯曲をお願いしたいところです・・。
  • 梅津瑞樹さん:何回かくらいしかお芝居を見させてもらってないんですが、めちゃめちゃ楽しそうでしたね、イキイキとしていましたね。きっと丸尾さんがこんな梅津を見たいっていう、その思いが溢れていたんだろうと思います。梅津さんの中に渦を巻いている俯瞰と熱狂のエネルギー。梅津さんが持ってるお芝居の引き出しをどんどん開けていくお芝居が見たいです。個人的には、さなぴーが銀ちゃん、梅津さんがヤスを演じる蒲田行進曲をぜひ見たいです。丸尾さん、ぜひお願いいたします。
  • 真田佑馬さん:今回のさなぴーは、このお芝居の仕組みをすっごく俯瞰的にきちんと理解して、そして色んなバランスを取りながら演じているように感じました。たぶん、これまでのお芝居のさなぴーとはちょっとモードが違っていて、更に前に進む準備をしているようなそんな感じがあったように思います。自分のオールマイティさと与えられた登場人物としての立場。そして、舞台に咲かせる華。凄く高いレベルでまっとうしているように思います。東京公演はこれで終了ですが、まだ大阪公演も待ってる。どんなところへ藪中が行くのか、楽しみにしていようと思います。あと、歌がよかった~。お人魚クラブだったり、侍トリオの歌の時、めっちゃさなぴーの声が聞こえるっていうかメインボーカルな感じがするので、配信でもじっくりと耳をそばだてたい・・って、めちゃ可笑しい場面なのでまあ笑っちゃうんですけどねww

 いやあ。。そして、劇団員や他の方々も存在感凄かった。登場人物が多いのに、全員のキャラが立っていて、埋もれる人がいなかった。さすがの20周年の演出、そして「好きの力」の凄さだと思いました。だから、本当にやめられないんですよね・・・。

 さて、最後に、萩ちゃんも安井くんと一緒に舞台を見に行っていたので、そのツイート貼っておきますね~。