ラボを捨て、ビーチに出よう

Love-tuneから7ORDERへ:どこにいたって君がアイドルだ

社中テンペスト4回目(1/16ソワレ)

 2024年1月16日ソワレ。4回目の社中テンペストに行ってきました。本当にいつも、登場人物全員で作る迫力満点の舞台。特に最後のギン、井俣さんの許しを請う姿のあたりから感極まってしまって、家にたどり着いても朦朧としてて、大した感想をつぶやけないでおります。もう4回目なのにこのヤラレ感、なんなんだろう、どうしてなんだろうと自問自答する日々であったりします。4回目の「呆然感」が抜けたのは17日も18時を回ったとこだったから、本当にとんでもない・・。アルコール度数激高のめちゃめちゃ美味いスピリッツを一気飲みして何杯も飲んでる感じなのかも、、、とか、小さなライブハウスで爆音のロックバンドで死ぬほど暴れてきた時と同じ?、なんて感じていたりします、

 その「濃さ」の原因。個人的に、ひとつ、すっごく単純に思うのは、まずはセリフの声のボリューム!。みなさん声が本当に大きくて、毎回劇場を揺らすような「響き」があること。それを全員で一斉に行う群唱が何度もあること。これを舞台の最初から最後まで、そして毎回毎回の公演ごとにやって、まだ全然力のもつれを感じさせることがない底力。もちろん、縦横無尽に、色々なお芝居をこれでもかと、そして軽々と披露していく鈴木拡樹さんをはじめとして、それぞれの持ち味を押し出して演技が密度高く2時間半弱を埋め尽くしていく。目を離せないことが続くことが「濃さ」を感じています。

 もう一つは、目と目を見つめ合うお芝居の多さ。舞台の最初の方でギンがランに「目を見ろ!目と目を合わせることで相手を理解し、芝居が生まれてくる」みたいなことを言うのですが、そういう人と人が真正面からぶつかり合うようなお芝居が続くんですよね。ギンが上演中の芝居を壊そうと暴れまくるという緊急事態ということもあり、登場人物たちがバンッと出会って、ガツンと話をする・・そんなシーンが多いような気がします。萩ちゃん演じるゲキも、生きている時にも、そして死んで劇場(劇団?)に居ついている幽霊となっていても、登場人物たちと目と目でぶつかり合い、ある時には肌を合わせてのお芝居をしている(なんて贅沢・・)。そのせいもあるのかどんどんお芝居の柄が大きくたくましくなっていくのが嬉しくて眩しくて、とついついお芝居を離れて思ってしまうのでした。

 4回目を見終わって思うのは、このお芝居がとてもとても「普遍的」で「多くの人に刺さるテーマ」、「誰が見てもびっくりするような素晴らしい演技」を扱っていて、だからこそ多くの人の感動させているのかなあと思っています。もちろん少年社中の歴史であったり、原作のテンペストを知っていれば、そして体験していれば、更に深い感動や深い思いを味わうことができるのかもしれない。でも、そうでなくても、好きなことを集団で何かをすることの喜びや、集団で楽しいからこその裏表の悲しみや怒り。知らぬ知らぬ間に生まれてしまう支配するものとされるものの相克。その「支配・被支配」は知らぬ間に自分の内に生まれていて、美しい宝石と共に深い闇をもたらしている。そして、そこから光をつかもうとあがく姿。そこに生まれるすべての感情。演劇の魅力も、そこにある闇も、(芸術的というより)人間的な立ち位置で描こうとしている。

 ある人は「お客さんが見ている舞台を壊そうという設定が受け入れられない」という人であったり、「劇団の壮大な内輪もめを見させられいる」と言う人もいるけれど、それは見ているあなたの身にも形を変えて起きることだし、すべての美しいものがそういうものの為になくなっていってしまうことがどんなに沢山あるのか、でも、だからこそ、それを乗り越えることへの渇望と「そこにあなたにいてほしい」という思いが成就することへの願いを、皆で分かち合えるのだと思うんですよね。ギンが板の上に戻ることへの願いをどれだけあの劇団の人が抱えているのか、「心から詫びて欲しい。そして戻って」という自分の中に押し込められている思いの蓋が開くこと、それは本当に「普遍的な願い」なのだと思うのです。

 それを目の当たりに見せてくれるのが、少年社中の劇団の人たちであるし、萩ちゃん演じるゲキであるのが本当に胸にグッとくるのは毎回なのですが、このソワレは特にカグラ(矢崎さん)とシュン(勝吾さん)のお芝居に惹かれました。カグラとシュンの人間性の対比やそれがプロスペローとキャリバーンの人と人外対比とか相克と重ねられてるのがとても好きなんですがど、最後の方の場面で自分がまさしく夢の中に立っているのに、それでも夢のはかなさと不安を語るカグラの思いと、自分たちの喜びを誰よりもわかっていて舞台や演劇に詰め込まれている豊かさを圧倒的な喜びで叫ぶシュンのだからこそ誰にも負けない強さと。ライバルであって欲しいけれど、その実、二人の「注目点」はすごく離れている。そこに人間関係の切なさを感じるけれど、でも、二人の思いが揃ってこそ、我々の世界は前に進めるという「真理」。俳優さんたちの繊細でエネルギッシュな個性と、それを見抜いて配置する演劇の凄さをまた感じたのでした。(で、二人の対決で「俺と戦え!」が出てきたのはもしかして鎧武リスペクト??)。

 さて、ゲキを演じる推しの萩ちゃんはますますお芝居がよくなってきました。って、他の方々に比べたら、キャリア的にもいろんな面でほんと伸びしろしかない!(とフォロワーさんが書いていたけれど、その通りだと思いますw)。萩ちゃんのお芝居やお声の大きさがどんどんよくなってるのが本当に嬉しいですよね。お芝居の「柄」が大きくなって、声も響き、ゲキのはかなさ、優しさ、そして大きさがだんだんと見えてみえてきたように感じるですよ。たぶんに、ランを演じ拡樹さんの姿を写し取ってるのだと思うんですが、どこで声を張り、どこで緩めるのか、そのメリハリが気持ちの良いものになってきたなあと思いますねえ。

 萩ちゃんのお芝居のいいところは、そのダンスに見られるように重力に苛まれるが故の感情であったり、そこから抜け出ようとする強い意志。必死で未来を引き寄せようとしてる人間の心情を表現できること。そして身も心もその役に没入して姿かたちを変えられること。多分に欲目なんでしょうけれど、ゲキに他のステージやライブでの萩ちゃんの雰囲気っていうかオーラや雰囲気がまーったくないんですよ。この日の配信も早速見たのですが、映像を見ると更にその思いが強くなる。演技も声もますます太く大きくなっていって欲しいし、萩谷慧悟ならではの魂の飛ばし方をもっと見せて欲しいと、ずっと見せて欲しいと思うのでした。ずっと演劇の世界に携わっていけますように。いつか大きな花が開きますように。

 そんな、萩ちゃんは15日はマチネだけで、その後ディスグーニーへ行ったみたいです。本当に役者さんたち凄いな!今日の休演日もお仕事かな~。少しゆっくりもできるといいなあ。

 といいつつ前回の休演日後、ぐっと萩ちゃんのお芝居も変わってきたので、また色々と期待してしまったりしていますよ~。どうかご無事で!土曜日・日曜日、観劇します!