ラボを捨て、ビーチに出よう

Love-tuneから7ORDERへ:どこにいたって君がアイドルだ

DisGOONie "Sailing" Vol.10 anniversary ship 「MOTHERLAND」のざっくり感想

 萩ちゃんこと萩谷慧悟くん、12月7日、8日にマザランにゲスト出演後、12月10日の夜公演を観劇したとのことです。その感想がとても熱い・・・。ヒリヒリするくらい熱い。

 悔し涙というのもなんだかわかる気がするんですよね。私も本当に羨ましかったもの!。あの素晴らしい舞台を見たら、自分もあそこにいたかった、自分だったらどう演じる・・という気持ちになっちゃうと思うんですよ。それだけ、このマザラン、出演者みなさんのひとりひとりが輝いていて、その俳優さんの持ち味や可能性をどんどん引き出してくれている。俳優さんに舞台上で思う存分演じてもらって魅力を開花させる西田さんならではの演出がずばりと嵌ってる。もうね、一介のファンにとってはたまらない嬉しさ。そして、きっと演じる側の人達もそう思っているんだろうなあと感じた萩ちゃんのツイートでした。

 でも、萩ちゃんが書いているように「明日は我らは大阪!」。萩ちゃんや7ORDERのみんなが一生懸命営んでいる、自分が愛するまだその小さな国を一生懸命愛すべく推し事をしていきたいので、まずは本当にざっくりとで申し訳ないのですが、マザランの感想を書いておきたいと思います。ちなみに、この舞台よりも先に上演されており、この物語の続編でもあるPhantom wordsはまだ見ておりません。なので色々と大事な部分を勝手に解釈してしまってると思いまずがそこはご容赦を!見たのは、12月3日初日、7日、8日のはぎれお出演回です。

1.ストーリーとか大枠みたいなものとか

 今回の舞台は、春秋戦国時代の末期、後に中国全土を統一し始皇帝と名乗る秦王・嬴政が天下統一に進んで行く時期を描くものでした。ストーリーの中心に、秦と対立していく合従軍の中の大国・楚の王子であり、現在は秦の人質となっている昌平君を置き、戦国の七雄と呼ばれる国々が持っていた複雑な人間模様や国を愛する心を描きながら、なぜ秦が全土を平定できたのか、嬴政が示したものの新しさと半面の限界みたいなものを、とても俯瞰的に、でもキャストすべてに暖かい目線で持って描いた物語のように感じました。何かの配信で西田さんが今回のコロナ禍のことを話されている時に、なんて俯瞰的にものを見ることができる方なんだろうとちょっとびっくりしたのですが、その手触りがこの舞台でも感じました。
 春秋戦国時代は500年もの長きにわたって、多くの国の王たちが国を思い、民を愛し、人と人の繋がりを大切にし、土を守っていくことで、国を大きくしようとしているそんな時代だけれど、最終的にそれは常時、国と国の争いを生み、いつまでたっても戦は終わらない、そんな隘路に陥っていた時代。そんな中、この物語の始まり、中国統一を成し遂げると天に選ばれた人物に「言葉」を与えるという黄石公が言うには「すべてのヨは言葉で語れる」と告げる。春秋戦国時代は、諸子百家と言われた思想家や軍師たちが大量に爆誕していた時代でもある。つまり、具体的な諸々の愛や勢力争いという具体的な問題をいったんおいておき、何が新たな時代を開くのか、これ以上争いのない国はどうしたらできるのか、俯瞰的に、抽象的に考えいくこと、それは「言葉」であり、「理」であり、「法」である(秦の丞相として登場するあのとてもとてもすごく面白い李斯は韓非子などと並ぶ法家の人でもある)というところにたどり着いた嬴政が天下をとっていくという大枠があるのかなあと思いました。これは私個人の肌感なのですが、そういう新たな世を作っていく嬴政を合従軍六か国の王たちは、半ば好ましいもの、憧れみたいなものとして感じてるような気がするんですね。中でも才人である李牧の嬴政を語る時の目の色の輝きといったら(村田洋二郎さん演じる李牧本当によかったですよ。今までで一番好きな役柄であり、渾身の演技であったなあと)!。

 しかし、一方で、その「言葉」や「理」や「法」は、「人を人と思わない」ような苛烈な采配を嬴政にとらせていく。共に趙の人質として奴隷の身分に落とされながらも励まし合いながら生きのびてきた燕王・太子丹を統一のためには非情に見捨て(この時の松田凌さん演じる嬴政の穏やかな笑みを浮かべた表情と平山さんの優しさと弱さと情念がにじみ出たお芝居が凄すぎてだな!)、親交も厚かったと描かれる韓王・韓信も、そして、いっときは軍師として右腕に厚く信頼し、その能力を熱く買っていた楚の昌平君も、全部切り捨てていく。昌平君の自決(おそらく天下統一のためにはそれが必要なのだとわかっていたのだろうなあ)を見届けた後、優曇華の花の下で座り込んで天を見上げる、おそらく黄石公の声を聴いてると思われる嬴政の泣いてるような、笑っているような、皇帝(エンペラー)の孤独を一心に体現するようなお芝居を見ながら、辛さと半面の高揚感に打ち震えてるのでした。
 しかし、だからと言ってその「言葉」と「理」だけが全てでないことを描いていくのもこの舞台の凄いところで。六国の王たちのそれぞれに由縁をもつ複雑な人間模様や、豊かな大国である楚の暖かなファミリーの暖かさなどの古来の良さも描き、そして、そのファミリーを乗り越えて行く新たな世代の動きも描いていくという。王族を排し直接、この土を愛したいという楚の姫、春霖。(ホワイト)韓信との厚い師弟関係を描きながらも次代の世界を冷静に読み抜く力を育てられた超良が至る「国とは私個人ならば泣くものはいない」という突き抜けた発想(だわ・・ワトソン君)。そして、その行き着く先は新たに生まれてくる命そのもの、それを守り育てたいという心が多分ファントムワーズの世界に繋がっていくんだろうなあと感じた次第です(うー、早く見て答え合わせしたいw)。

 その物語の構造を見ると劇中で殺されちゃうけどながつの演じた麃公は人脈に頼らず武と理をもって民が泣かない世界を作ろうとする嬴政の武将、萩ちゃん演じる鍾離眜は、その二つの世界から新たな世を作り出すための波であり芽を育てるための架け橋となる役、二人とも新たなヨを作る大事な役をいただけて本当によかったなと改めて思うのでした(韓信が「育てている者がいるのです」というセリフ、直接的にはファンワズの雛罌粟のことを指すのかなと思うのですが、それはふんわりと萩ちゃんにもかかってるのかなとそうだったらいいなあと思いましたね、いや、妄想過ぎてすみませんw)。

2.ディスグーニーの味わい

 初日にとても感じたのは、俳優さんの持ち味であったり、その成長途上に応じたポテンシャルを存分に引き出してくれる舞台だなあと改めて感じました。まずは何より、その幹となる、萩野さん、谷口さん、村田さん、そして声だけの出演でしたが田中良子さんの演技の太さ、何より滑舌というか、セリフを届ける技術の凄さ。見てる自分も初めてなのに、本当に何を言ってるのかが言葉としても、内容としてもしっかり伝わるんですよね。村田さんの舞台をどんどん煽っていくあのセリフ回しの凄かったこと。谷口さんの「人間の手触り」が伝わってくるトーンの変化の細やかさ。萩野さんはしゃしゅしょの発音の人だけれど伝わる言葉は明瞭でなおかつ色っぽさにも溢れている。表面的な滑舌を超えたセリフの力を感じて改めて凄いなあと思ったのでしたよ。そのセリフを届ける力は、今回舞台運びの中心となって凄い迫力で舞台を支配している松田凌さんや鈴木勝吾さんさえもしのぐものがあって、どうしたら、どんな経験やどんな鍛錬を積んでいくとあんな風にセリフを伝えることができるのか。この四人のその言葉の力が、ディスグーニーの世界の枠組みをしっかり作ってるそんな気がしました。

 その上に、今回の舞台の幹となる、まさに大黒柱といってもよい松田凌さん嬴政と鈴木勝吾さん張良。彼らの迫力、体からにじみ出るオーラとカッコよさ。どんどん舞台をぶん回していく、その力強さ。初日はとにかく、「松田凌かっけー、勝吾さん凄すぎ・・・」と唱え続けていたいような気がします。舞台の上を縦横無尽に動き回り、どんな殺陣でもこなしてしまい、あらゆる感情をとんでもない強さでぶちまけていく。あまり直接対峙することは少なかったけれど、お互いの力へのリスペクトであったりライバル心をびんびんと感じた次第です。いや、ほんと、まだ若くて充実期に入ってきたところのお二人に出会えているのってすっごく幸せだなあ私と思いましたね(そして、舞台IDを存分に見ておいたのも本当によかった)。萩ちゃんもすっごい出会いを貰っているんじゃないと改めて思うのでした。

 更に、今回、乗船されているベテランな俳優さんたちの素晴らしさ。誰一人スキがない。椎名鯛造くんなんかもう普通にディスグーニーに必要な人材な感じだし(たてじろうさんと今度殺陣ユニットをやるのですね、あー見たい~)、長友さんには李斯が非業の死を遂げる舞台をぜひやって欲しいし、青木さん(萩ちゃんご挨拶してる?産みの親みたいな方ですよ)はどんどん長刀の殺陣がカッコよくなっていくし、鈴木みのりさんお芝居上手すぎるし、横山さん本当に難しいお芝居を味わい深く演じていらっしゃったし、平山佳延さんは今まで出会えなかったのが不幸すぎる・・と思うほど素敵な素敵な俳優さんでしたよ。もう全員素晴らしかったんですけど、ほんとベタで申し訳ないくらいなんですけど、凰稀かなめ様にやっぱり撃たれましたね、素晴らしかったなあ。寡聞にして、舞台を拝見してから、宝塚のトップだったと知ったんですけど、身体能力も演技力も宝塚のトップってこんなに凄いのか・・と初めて知った気がします。項燕様と項梁様のラストのシーンは、まるでベルばらのオスカルとアンドレみたいだなあと思っていたら、かなめ様はオスカルをやっていらっしゃという・・やばい沼が待っていそうです。

 そして、そんな堅牢かつ美しく戦闘力もばっちりな海賊船に乗る若い俳優さん達。瀬戸さん、仲田さん、伊藤さん、新條さん、中川さん。私が見た3回だけでもどんどん舞台での輝きを増していかれて、お芝居も変化していって、凄いなあ、よき体験をされているんだなあと思いましたよ。8日のは、仲田さんのアドリブ(?)も大爆発されて、イキイキと舞台の上で生きてるのが印象的でした。最後のシーンも、泣きながら舞台中央の二人に駆け寄って、着いたら満面の笑顔で、ほんとそこが春申君らしいなあと感じましたね~。瀬戸さんも持ち前の優しさと、このマザランの中で昌平君として生きてきた思いが混然一体となってて、まだまだどんどんよくなっていくんだろうなあと感じたのでした。

 大阪での大千穐楽が配信されるのが本当にありがたくも嬉しいです。どんな風に進化していくのか、我が国から熱く見守ろうと思いました!