ラボを捨て、ビーチに出よう

Love-tuneから7ORDERへ:どこにいたって君がアイドルだ

萩ちゃん出演、朗読劇「SEVEN」@シアコン

 萩ちゃんこと萩谷慧悟くんが出演するシアターコンプレックス・クラウドファンディング返礼品イベントである「SEVEN」が10月17日に配信されました。配信と言っても生の舞台の配信だったんではないかと。18日からは11月18日まで一カ月間アーカイブ配信がされる予定です。

 今回の朗読劇は、川尻恵太(SUGARBOY)さんが脚本演出をされ、北村 諒さん、陳内 将さん、染谷俊之さん、多和田任益さん、萩谷慧悟(7ORDER)、藤田 玲さん、和田琢磨さんが出演されました。萩ちゃんを除く全員がベテランぞろいの有名どころ、そしてこの中では萩ちゃんは圧倒的に舞台のキャリアも短い中、どんな朗読やお芝居を見せてくれるんだろうかとドキドキでした。それにしても、自分もまだまだ観劇初心者ですけど、萩ちゃんを除く6人中4人の方は7ORDERメンバーの出演作からの流れで舞台を見させてもらったことがあって、この1年余りの彼らの活動の勢いと自分の嵌りっぷりになんだか始まる前からしみじみとしていました(笑。川尻恵太さんのお芝居もまた初めて。サクセス荘の脚本も手掛けられているとのことですが、なんにせよ初めてのことは本当に楽しくって、どんなになるか始まる前からかなり緊張してました。

 今回の「SEVEN」は文字通り7人の俳優による朗読劇でしたが、実際の劇場を使っての無観客配信といった感じでした。お話は独立した全3話から構成されていました。1話目は売り上げ不振で閉店することになったハンバーガーショップの店長と6人の店員のコミカルな会話劇。閉店の真相が明らかになっていく不条理ともいえる展開が面白かったです。店長(和田さん)が一番下手で、7人がずらっと並んでの朗読。店長の横で、その隣は北村さん。萩ちゃんは一番新入りの店員さんでした。7人お揃いの赤いエプロンがとても似合っていて可愛かったな~。2話目は、アメコミのアベンジャーズみたいな7人の能力者が招集されて、地球の危機を救おうとするお話。普段は中の悪い7人がアメリカンな悪口をお互いに叩きあいながら、意外なミッションに挑む様子が殊の外面白かったです。司令官が藤田さんで、萩ちゃんはメンカラ緑の植物を操るイヤミな能力者でした~。そして、3話目は高校生の修学旅行の京都の宿の夜。就寝時間なのに、当然寝ない7人の高校生。うち2人が勝手に大阪のUSJに行き女子大生と知り合ったことを知り、そこから意外な展開が・・。最後にはこの2020年の状況とも重ねながら、青春の大事な大事な一瞬を切り取った一作になっていました。萩ちゃんはきちんと京都のお寺巡りをする大人しめの人物ながら物語のキーとなる大事なセリフを任されていましたね。3話ともきちんとひねりが効いた脚本で、バラエティにも飛んでいて面白かったなあ~。

 萩ちゃんは今回の6人の俳優さんとは初めての共演でしたが、他の方々はそれぞれに共演も多いそうで息もぴったり。皆さん声も素晴らしく、セリフや会話の勢いも凄くって。みなさん今回の役柄での印象ですけど、和田さんの包容力のあるお芝居と滋味ある深さ、陳内さんの百目鬼の耽美とは正反対の骨のある兄ちゃん感との幅、多和田さんの声の清々しさと一つ一つに圧のあるお芝居、藤田さんはいつもそうだけれど本当に声の芯と広がりが素晴らしくって、北村さんはやっぱり端正に美しいんだけれど弾力のあるお芝居が魅力的で、染谷さんは今回はクレイジーな役回りだったからだけれど素晴らしく癖があって。原作ものではないからこそのお一人お一人の俳優さんの「姿」を今回見ることができて本当によかったなあと、そして、こういう素晴らしい俳優さんと一緒に、こういう素敵な脚本で、萩ちゃんがお芝居させてもらえたのは本当によかったなあと本当に心から思いました。ほんとよかったな~。

 そんな萩ちゃんのお芝居はどうだったかというと。まっすぐにいただいた役に向かい合って3人の人物に、萩ちゃんらしくしっかりした造形とイメージを与えて、本当に演じることが「好き!」っていう喜びがビシビシと、バシバシと伝わってくるようだったなあって改めて感じましたね。このバリエーションや演じたい気持ちから出てくる手数といった萩ちゃんらしい特徴もいっぱい出ていて、そのあたりは第2話の植物魔人のスモールQの作り込みによく出ていたなあと(メンカラ緑がやっぱり本当に似合っていたし、北村さん演じる役が巨大鳥を飼わせようとするところとかめっちゃ宛書疑惑w)。一方で、やっぱり第3話の高校生萩谷は、若さの瑞々しさと切なさとざっけなさが本当によかったですね~。このお話は最後のオチが2020年の高校生たちに直結していて、大人の視線がそれを見つめながら、でも当事者としての切なさが萩ちゃんの「若い声」に集約されるみたいなところをしっかりと背負っていて、本当に素晴らしかったです。だからこそ、この手練れの集団に萩ちゃんのような若い役者さんを起用したのでしょうし。そして、その「若さ」を大人になりかかっている6人の役者さんが支えている(それがラストの大人の目線)ところのコントラストがあってこそなんだよなあと、その配役の妙を感じたのでした。

 そんな風に、和田さんをはじめとする6人の役者さんの堂々とした声の存在感、ハリは本当に素敵だったし、自然と人物の造形ができてくるところとか、丁々発止のやり取りを見てると、萩ちゃんがあの領域に行けるまでにはまだまだ乗り越えなければいけないこともたくさんあるんだろうなあっては思うんですよね。こんな風なお芝居をコンスタントにできたら・・なんてやっぱり思ったりもします。でも、朗読劇「SEVEN」のあのラストシーンの声とあのセリフの理解の仕方と切なくも明るく冷たい秋の空みたいな姿は忘れられないんだろうなあって思います。ちゃんと芯のある思いを演じることができる役者さんだなあと改めて思ったのでした。このたった一回の本番の朗読劇の経験が萩ちゃんの歴史にどんな記憶と思いを刻んで、いつかどこかのステージで表れてくることがあればいいなあって、心から願うのでした。本当に素敵なお芝居をありがとうございました。