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Love-tuneから7ORDERへ:どこにいたって君がアイドルだ

劇団おぼんろ「月の鏡にうつる聲」4回目、5回目

 萩ちゃんが出演中の劇団おぼんろ第23回定期公演「月の鏡にうつる聲」の8月8日夜公演と8月9日夜公演に行ってきたので、その感想をざくっと書き留めておきます。私は夜公演だけでしたが、この両日は昼夜2公演の日でした。

 この日は自分的に4公演目。お話の全体像もわかってきて、そして演劇としての面白さや興奮が少し落ち着いてくると、お話の細かなところが胸に刺さるようになってきますね。お話全体としては、時代や人の思惑によって翻弄されるけれど、人と人の愛を美しさと根源性を描ているのだと思います。離れていてもどこかでつながってる、そういう信念みたいなもの。でも、人の世のすべての要素が詰め込まれてるような、そしてそのすべてを表現できる素晴らしい俳優さんたちの舞台なので、そういう美しいもの以外のものに目が行くようになってきた8日夜でした。

 特に、日に日に若者ズの悲惨さの表現が増しているようで、見ている側にもその辛さ辛さが身に染みてきますよね。アナタは自分で蜂起しておきながらも「現実」や「人々の内心」に触れて人生の悲惨さに翻弄されまくっていますし、ザギリはおそらく自分の中にあった闇のパワーが支える正義に苛烈に向かおうとするし、何よりあの優しかったユミルの不幸。誰も悪くないし、みんなが悪い。その時代に向き合ってしまった、そのやるせなさ。なぜお互いの気持ちを伝えあわないのか(ミツはなんで花のことを桃太郎に早く伝えなかったのだろう。主人を討った者たちをやはり恨む気持ちはあったのか)。いわゆる戦争に関する物語の正統的な、そして深く心に迫る表現に身を削られるような思いを感じました。ほんと自分の体調もあるかもしれません。

 この日は特段に松村さん演じるザギリと石渡さん演じるユミルが自分の思いを存分に表現してお芝居が太く細かになっていくように感じていましたが、一方で萩ちゃん演じるアナタは、7日とは違ってて、とても感情的に翻弄されてとても幼く見えたんですよね。巻き込まれる運命をある意味自分で選んでいるのに、どこか俯瞰というか身を引いてしまう、そんな弱さが前面にでていたような。それが、お芝居がぐちゃっとしてるようにも、喉を絞って声を出してるような、演技なのかそれとも他の方々と相対的な地力のなさなのか、ほんと見てて色んな意味で辛かったです。

 そして、自分のお席が最前超下手だったのですが、ラストの紙吹雪まみれたり、舞台上の語り部さんたちの表情をまともに食らい、いつも以上に体力を使った気がします。アナタの桃太郎に自分のことを語る本家桃太郎と温羅の秘められた思いの激しさ。斜めのラインからくるその表情。例えば、アナタと温羅のシーンだと、ウラの表情を正面から受ける感じになるのでやばかったです。そして、ラストシーンで太鼓をたたくアナタの表情も見てるだけで胸が締め付けられるようだったなあ。戦いの後、幻の中で実現した月が煌々と輝く中での祭りと太鼓。ある意味天のとりなしで、ファンタジーに優しいはずなのに、最後の一打に向かって振り絞って叩き続けるアナタ。ここまで激しいやりとりしてきてる中でのこの太鼓の演奏をしてるのほんと凄い。

 そんな感じでちょっと辛い8日夜でしたが、実は職場の年上のお友達をお誘いしてて。とてもよかったと言ってくださったけれど、翌日もおぼんろさんのことや昨日の演目のことを色々と聞いてくださって。とても面白かったし勉強になったと。さひがしさんのお声とセリフ回しに感動されてたな~。次のおぼんろさん決まったらお誘いしますねと聞いてみたら、ぜひとのことでした。お友達と一緒に行けるところが広がる嬉しさ。萩ちゃんの舞台に行くと、どんどん続けていきたくなる場所が増えるなあと。本当にありがたいことだなあ。

 さて、翌日の8月9日の夜公演。自分的に5回目。この日は2列目の上手でした。こちらの方が断然見やすい(笑。そういえば、末原さんのイラストが満載のグッズがとても良くてですね。Tシャツもバッグも自分がちゃんと使えるヤツ!楽しく色々と買わせてもらっています~。

 そして、いつものように始まる舞台。でも、毎回、少しずつ違う。特に、萩ちゃんは演技の力がまだまだなので、毎回毎回とても違う(笑。おぼんろさんの劇団員の方々や共演の方々のレベルが高いので、声や発声のことや演技面で色んな意味でひやひやするところもあるのですよ。でも、この日の萩ちゃん、めちゃイケボだったんですよ。いい声を響かせて、翻弄されながらも、落ち着いて、自分のことと引きつけて受け止めてるアナタであって。上に書いたようにはとても感情的に翻弄されてとても幼く見えたのよね。見てて辛かったけど、今日は地に足が着いた感じだったですよ。沢山の人と出会い、その人からの波動をしっかり受け止めて、その人にきちんと返せていたような気がします。うん、書いていて正直、上からかもしれないけれど・・・。でも、こういう場に来れたからこその深い体験ですよね。

 そんな風だったのか、終わった後のこの気持ち!月の輝きが嬉しかった~。

 この日はマチソワで、そこもちょっと不安だったですが、段差をぴょんぴょん乗り越えていましたね。飛び込んでいるかみたいにお腹で段に乗っててちょっとドキっとしたー。温羅とのシーン(このアナタが桃太郎に移されて、イマジナリーな経験をするというところが本当に染みる)での感情の絡み合いがふっと出てくるのが心叩かれましたよ。暖かさや優しさの裏側にあるものを、つたない第三者(しかしアナタが見るべき)が知ってしまう時の衝撃ってこうだよなあ・・・みたいな。

 おぼんろさんや2階席で見た方からの発信で、本当に2階席でも観劇したかったのですが、行けるところは全部チケット買ってしまっていたので、さすがにもう増やせないのが残念無念。でも、昨日、自分は最前に近いところの楽しみも発見してしまったんですよね。人々がどういう視線をどんな風に送っているのか、まるで自分がその舞台に立ってるように感じる瞬間がたびたびあるんだなあと。上の温羅とアナタのシーンでは、下手でも上手でも両者の視線がまっすぐ観客の自分に刺さるところがあるんですよね。そして、上手と下手で見える風景が本当に違う・・その席でないとわからないことが沢山あるような気がしました。

 この日は終演後、萩ちゃんからも舞台に、アナタについてのお話をインスタに綴ってくださって。

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 萩ちゃんが語るアナタ、「アナタは持ち前の明るさと行動力で村人たちの人望も暑く人一倍正義感と好奇心が強いのでとにかく全てに真っ直ぐにぶつかり、その度に心情や考えが揺れます。とにかく揺れます。そんなアナタはこの短時間でとてつもない成長を遂げます。人はタイプか違えど日々何かに悩み、葛藤し、その度に揺れると思うのでそんなところに参加者の皆様も少しでも共感ができるように日々励んでいます。」と。本当に萩ちゃんの地に近い役作りされてるんだなと。これはずっと感じてることだけれど、萩ちゃんの美点って、相手をリスペクトして、まっすぐに不安になり、その恐れを大切にして、揺れているところかなと思うんですけれど、正しくそういうアナタだなあと。それができているのは、「この物語はアナタの物語」という言葉を経験させていただけてるのは、おぼんろさんの懐の広さや暖かさだと思うのですが、本当にそこで生かせていただけているなあと。

 色んなことがあるけれど、あればあるほど色んな出会いの大切さやありがたさが身に染みる。ずっと追いかけていきたい人たちに出会えるの本当に嬉しいな。ディズグーニーもそうだったけれど、今回、おぼろんろさんに出会えた。きっと同じように今回出会った人たちを追いかけていくのだろうな、自分は。そして、何より、精一杯研鑽してる萩ちゃんに出会えてよかったなあと、そしてこれからも新しい出会いは続いていくのだろうなとぼんやりと思った5回目の夜でした。