ラボを捨て、ビーチに出よう

Love-tuneから7ORDERへ:どこにいたって君がアイドルだ

「27-7ORDER-」のざくっと感想

 さて、ざっと27のあらすじを振り返りましたが、2時間弱の舞台の中に色んな要素が詰め込まれていたんだなあって改めて感じました。もうちょっと長ければもう少し描写が欲しかったところもきちんと描かれたのかなあとちょっと思ったり。特にショーとカズマの関係性とか、ジャニスとの関係性もそうだけれど、カズマにとっての二人の存在の意味、私はそれは性とか生の重要性みたいなものだと思うのですが、そこにもっと踏み込めた気もするんですよ。でも、それをしないで、音楽と役者の力を思いっきり発揮させるところに注力した、爆発力がガンガンと伝わってくる舞台になっていたように思います。

 本当に今回、音楽の力って偉大だなぁってつくづく思いましたよ。初回に見た時には、ラストの「27」のイントロがかかった途端、どうどうと涙が流れてしまったんですよね。何の理由もなく。もちろん、あの場面の過去と現在の、愛と音楽と自由を求める心が交錯して爆発するというストーリーと演出は演劇ならではのもので素晴らしい曲を更に凄くしていてなんか表現って凄いなあと思ったのも確かです。それでも、なぜイントロだけで涙がでるのか不思議でしょうがなくって。そして、観劇を重ねるたびにどの曲も素晴らしいことを通過して。楽曲は、M1メメント・モリ、M2Love showe(スコアクラブ)、M3再生(ジャニス&メメント・モリ)、M4腐った星(メメント・モリ)、M5僕が生まれた日(スコアクラブ)、M627 かな?(題は適当です)。

 個人的にバンドブーム世代のおばさんなので、メメント・モリのパンク+V系みたいな楽曲も大好き。M4の腐った星から飛び出せ~っていう曲がめっちゃバンドブーム時代の曲まんまでドストライクでだったなあ。もしかしてもうすでにある曲?っていうくらい再現性高いいい曲でしたよ。また、冒頭のメメント・モリの描かれ方とかカズマの荒れ具合を見ていると80年代とか90年代のバンドシーンを思い出してすっごく懐かしくなるというか、あの頃の「荒れ」が本質的に持ってるもの、はっきりしない何かを求めて暴力であったり荒ぶる感情だったり、むき出しの性だったり、[「刹那」でしか生きられなかったり・・。そしてそれを経てようやく気付く「何か」。かなりはしょってはあるけれどちゃんと伝わってくるなあって感じました。その自滅してしまうような荒ぶる魂のカズマを、まるでその人であるかのように演じる真田くんが凄いなあって毎回思って見ていました。私はカズマ、なんだかやっぱり好きなんですよね・・。だから、そんなカズマに優しい心が芽生えて、ジャニスと一緒に歌うM3「再生」が殊の外よくって。それを、カズマもジャニスもショーも本当に丁寧に歌うんですよね。この優しくて愛情に満ちた曲を聞いた途端にぽろぽろ泣きましたえ。歌の理屈じゃなく一発で心をとらえちゃう力は音楽という表現だからなんだろうなって少し思いましたね。演劇やダンスとは違うスピード、例えて言えば血管注射のような速度で頭に爆発するモードを持つのが音楽なんだろうなあって感じました。

 一方で、もうそのままデビューして欲しいくらいルックスの完成度が高いスコアクラブのアイドルパフォーマンス的なダンスも本当によかったんですよね。自分は元々、その人らしさがきっちり感じられるグループアイドルパフォーマンスが大好きなんですが、スコアクラブfeat.ユウマのダンスパフォがまさにそうで、全員がそれぞれに踊り方とかこう踊りたいってのがビシビシ伝わってくるのがほんとに好きでした。カート梅津さんのダンスはこころ映えの正しさがまっすぐ伝わってきてすべてのアイドルが見習うべきだと思ったし、シド高橋くんとブライアン北川くんの自分の個性でガツガツと圧してくるダンスが凄く好きだし、ジミヘン松田くんのダンスはとにかく楽しい・・。そしてユウマのダンスはとびきりのオープンハートのファンの心にまっすぐファンサしているようなダンスで、やっぱりアイドルとしても天才だなあさなぴーは、と改めて感じた次第です。まだ上手く言えないんだけど、ラジパのウォークライの生きることがダンスみたいなのとはまた違うダンスの世界があるように感じました。

 そして、今回出演していただいている俳優さんたちが本当に熱くて燃えたぎるような芝居をしてくださっている。財木さんは難しい役を本当にアツく説得力満点で演じてくださって、梅津さんの舞台のすみずみにまで目箸を聞かせてどんなセリフでも聞かせてしまう素晴らしいセリフ回し。声のギヤが100速くらいありそうなきめの細かさ。さなぴーも含めて、27歳同い年トリオの力、本当に凄かった。そして、25歳定本くんが本当にひょうひょうとしていて冷静で。でも優しくて頼りになる人で凄かったんですよね。シドの高橋くんとゲンキの中島くんの思いがストレートに伝わってくるお芝居やダンスがとてもフレッシュでよかったなあと。今回、ゲンキはファンの立場を代表するような人物像になっているんですが、私たちの気持ちを全部言ってくれている気がしてて、とても尊い存在だったなあって感じます。

 そして、この舞台の主人公を演じるさなぴーの存在に何か新しいものを感じて。この舞台のさなぴーは役者さんでもあるんだけれどもっと別の新しい何かと言いたくなるような存在だなあって感じたんですよね。さなぴーって、演技も音楽も凄い、アイドル力もある。全部がほんと凄くて「表現者」っていう言葉が一番しっくりくるのかもとちょっと思いましたね。星野源さんのようあ新しいジャンルの人になるのかもと思いましたよ(後になってご本人が星野さんやリリーフランキーさんのようになりたいと言ってるのを見て我が意を得たりと・・)。

 また、今回のさなぴーのお芝居って昔とちょっと違っている気もしました。昔はもっと要素を重ねて演じる人物像を作り上げていてその細かさからくるナチュラルな人物像っていう、とても演劇的なお芝居をしていたように思うんですが、今回はどんどん脱ぎ捨てていくことで、それでもユウマになり、カズマになる、そんな感じさえしました。魂が憑依している演技ってこういうことを言うのかなとも思うくらいで。それが俳優として油がのりつつありまだ勢いのあう財木さんや梅津さんの演技とぶつかりながらもスイングしているそんな舞台になっているような気がします。

 そんな御託はともかく、このカンパニーが全身全霊でこの作品を作り上げているのが本当にストレートに伝わってくる舞台になっているのは確かです。その熱は、観客にもちゃんと伝わっていて、ダブルアンコールの時にスタオベになったんですが、その拍手凄かったんですよ。湧き上がるようでホントに鳴り止まなくて。そして、そんな客席を、フラッとしながらもタモさん拍手で場を収めたさなぴーと、すぐに反応できた熱いファンの方々は本当に凄かったです!

 こんな熱い舞台、そして楽しい舞台、なかなかあるものじゃないと正直思います。まだあと1週間続くこの舞台。ぜひ、神戸アイア劇場まで足を運んでくださったら幸いです。きっと今だけある、今だけしかない奇跡みたいなもの・・が見られるはずです。