ラボを捨て、ビーチに出よう

Love-tuneから7ORDERへ:どこにいたって君がアイドルだ

舞台「PSY・S」へのひとりごと

 謎は外から見やって解くものではなく、謎は自分の力で解決するもの。そんなことをとても感じたお芝居だった。推理ものではあるけれど、その内容は未熟な若者たちが、自分自身の存在と意思を持って世界を切り開き空に飛び立っていく物語がその中心であって、とてもよくできたアイデンティティー探しの物語であった。17年前に作られた物語は、おそらくその時の作者たちの思いのまま、若者が大空に飛び立とうとする思いをそのまま宿して、今の若者たちのところに、この物語を、今、必要とする若者のところに再び戻ってきた。エバーグリーンの命を宿した物語を見ることができて、本当に幸せだった。

 まだ少年の面影を残したコナン・ドイルが文通中の恋人からもらった一通の手紙には「あなたは誰?」と書かれていた。愛と自我の崩壊の危機に慌てふためく若者が寄宿学校という閉ざされた世界から、大都会であるロンドンの町に赴いていく。娼婦、警察、タイムスリップしてきたルネサンス人、稀代の怪盗、変人奇人、そして真の犯罪者。出会う様々な人たちはいずれもその存在に謎を秘めている。まるで歌舞伎の物語のように、ほとんどの登場人物が「実は〇〇でした」を隠し持って、自分の本当の姿を探し求めている、そんな物語でもあった。そんな人々と正面から向き合い戦いあっていく中で、彼は「真実というもの」を知る。そして、舞台のクライマックスで、因果な運命の中記憶を失ってしまった恋人にむかって、真正面に向かいあうことを決心した彼はこう言うのだ。「私の名前はコナン・ドイルです。あなたを愛するコナン・ドイルです」と。

 この言葉は彼の自分はこういう人間であるという世界への宣言であると同時に、何より記憶を失いかけていた恋人の手紙に書かれた「あなたは誰?」に正面から向き合うことを示すものであった。不幸な経験により「記憶を失くしてしまった」彼女をそのまま受けいれることを心に決めた青年は、ひとつ大人の階段を上った・・そんな風な物語のように私は感じた。そのまっすぐな姿が、時空の迷子になりかけた二人を救い、物語にたくさん散りばめられた無償の愛を成就させ、残酷な執着愛に翻弄されそうになった天才を力づける一つの鍵となったように思う。というよりも、それらの愛は、単純な原因と結果でなく、それぞれの愛がそれぞれの原因となっている、そんな相互作用的な因果の曼陀羅のようにも見えた。

 そんな風にこの物語は、人の成長のとても基本的なところを丁寧に描いている。そうういうエバーグリーンな、いつでも、何度でも演じられるべきお話であったなあと改めて感じたなあ。そして、萩谷慧悟という駆け出しの俳優が、新たな世界に飛び立っていこうとする彼が配置されたことに、彼のファンとして、この舞台に関わってくださったすべての方に心からお礼を申し上げたい、そんな感謝の気持ちでいっぱいになるのだった。最後に、先輩方のお言葉の続きを貼らせていただきますね。本当にありがとうございます。 

 

ameblo.jp

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 物語への深い愛情がいっぱいにつまったお言葉ありがとうございます。きっともうちょっと書くことと思います。